基本練習への取り組み方

 毎日練習をしていると、いったい自分が何をどうしたいのかがわからなくなってくることがあります。「初心に帰れ」と、言うのは簡単ですが、人間なかなかそう謙虚にはなりません。モチベーション(やる気)を高めるためにも、自分のいまやっている練習が「何を目的としたものなのか」ということと、「それが今の自分の課題とあっているのか」ということを常に確認するべきだと思います。

基本練習

 同じコースでフォア、バック、つっつきなどをつなぐ基本練習。ぼくも再三書いていることですが、ここではスピードよりなにより、安定度が練習目標となります。でもつながるようになってくると、やっぱり退屈にはなってきますよね。こんなことして何になるんだろう、と。

 こんなとき、誰もが一度は試みるのが、スピードを上げていくこと。でもこれって、たいていうまくいきません。相手とのレベルが合わないと成立しませんし、自然とミスが増えるため、効率が悪くなるからです。ただし、相手とのレベルが合っていてミスが出ない範囲であるなら(100本がコンスタントにつながる)、問題ないと思います。

 どうにもこうにも、基本練習がわずらわしい。こういうときには、そもそも何のために基本練習をやっているのかと考えてみることをすすめます。

なぜコース、スピードを限定するのか

 試合になれば、ボールはどこにくるかわかりません。球質やスピードもいろいろ。こうしたことから、「基本練習は実戦的でない」という言い方をする人がいます。でも、ちょっと立ち止まって周りをみれば、強い人で基本練習をやってない人はいませんし、そもそも「素人っぽい打ち方」と「卓球選手っぽい打ち方」の差が生じるのは、基本練習の結果にほかなりません。

 結論から先に言うと、基本練習というのは「決まった形(フォーム)に身体が動くよう、反復動作を繰り返すこと」だと思います。人間の体は同じ動きを繰り返していると、その動きをしやすいように筋肉がついていきます。神経も発達していきます。これはいわゆる筋力トレーニングとは質的にことなります。筋力トレーニングは、「ある特定の筋肉を発達させるため」行なう反復運動ですが、基本練習は「ある特定の動きをくせづけるため」に行なうものです。

 「決まった形(フォーム)」というのは、ある理想型があって、そこに近づけばうまくなるというものではありませんが、それでも目指すべき方向性というのはあると思います。以下に私見を述べてみますが、これは意見の違う方もいるかもしれません。

・波打たず
・より早く(動き始めるまでの時間)
・より速く(スイングのスピード)
・力を入れず(1回いっかい力をこめていたのでは持ちませんし、タイミングも合いません)
・安定して

 これを練習の中でなるべく早く身につけられるように考え出されたのが基本練習です。100〜200という、たくさんの回数を打つことで、「スイングが波打っていないこと」と「力を抜いて打つこと」の両方の練習になります。また、矛盾するようですが、より速いボールを打つためには、基本練習の際にスピードを限定する(遅いところで一定にする)ことが絶対に必要です。ひとことでいえば「スピードコントロール」ということになると思いますが、自分で打ったボールがどれくらいのスピードになるかは、(コースと同様)ラケットを振った瞬間に把握できてなければなりません。

基本練習を効果的にするためのイメージ

 基本練習は、その人のかかえる課題によって、その目的が変化していきます。少し例をあげて説明しましょう。
 初心者にとって、基本練習の際の目的意識は「練習に参加すること」です。奇異に聞こえるかもしれませんが、初心者にとって、「打っている相手に迷惑なんじゃないだろうか」という思いは、いま初心者の人はもちろん、誰しも心当たりはあるところではないでしょうか。ともかくボールを相手コートに入れ、練習を成立させること。これはとりもなおさず、練習時間中の自分の居場所を確保することでもあります。これは上で述べた基本練習の目的にそぐわないように感じるかもしれませんが、ぼくは第一ステップとしてはこれでかまわないと思っています。フォームはともかく、台にいれること。これが初心者の基本練習の目的です。

 ある程度台に入るようになってくると今度は「フォームを身につけること」が目的となってきますが、実はこれ、ぼくは終生の課題だと思っています。つまり終わりがない課題。ですからこの段階ではもう少し個別的なことを課題と考えたほうがやる気が出るでしょう。たとえば「ラケットを振り切ること」であったり、「手首を下げないこと」であったり、「頭の前でしっかり止めること」であったり、「ラケットの戻しを速くすること」であったり。これらを心に抱きながらやる基本練習は案外集中してできるものです。
 こうした、目に見えて明かな課題がなくなってきた人、つまりは中級者から上級者が基本練習をしないかといったらそんなことはありません。プロでも基本練習はやります。ここでも目標は元にもどるだけ。つまり、いかにして「波打たず」「速く」「力まず」「安定して」打つことができるか。ぎりぎりのところまでこれを磨いていくのが基本練習です。ここではじめて、「相手のレベルがあっていないとき」の問題が出てきます。「速さを追求するなら、相手がそれについていけてなければダメじゃないか」ということです。こればっかりはたしかにそう。ただし、それでも基本練習時にイメージを持って望むことは大事。「どうなりたいのか」ということなしに、ただただ「相手が下手だから練習にならない」というのは単なるわがままです。相手がスピードについていけなくて、ゆっくりとしたペースでしか基本練習ができなくても、いかに「波打たず」「正確に」「安定して」という課題は残ります。これらはラリーのペースをあげれば必ず乱れます。いつもいつも速いペースで練習しなければ練習にならない、なんていうレベルは相当高いレベルの話。まだまだあなたの基本技術のクオリティは上げられるはずです。

 基本練習は刀鍛冶が刃を研ぐのに似ています。できあがりに近づいていても、問題があれば一から打ちなおすこともあります。いい形になってきたら、何度も何度も研いで切れ味を高めて行きます。打ちなおすには勇気が必要ですし、研ぐのには根気が必要です。質のいい基本練習を重ねて、切れ味の鋭い技を身につけましょう。

    2001-03-21更新

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